コラム
アルコール依存症について
アルコールが自殺への距離を縮める!?
北條 孝枝
いつもご指導いただいている精神科医の先生に依存症について教えていただきました。
「依存」には成長と自立につながる「よい依存」と依存症や共依存へと進む「悪い依存」があります。 依存とは対象に支持や援助を求めること。 「よい依存」では、主体性のある人間として相手をお互いにを尊重しながら、お互いに支え合い助け合います。 相手との距離感は程よい間合いがあるといえます。 対して「悪い依存」では、自分が安心や満足を得られないために常に相手にしがみついたり、相手を支配・束縛しようとしたりします。 この「悪い依存」が相互にあることを「共依存」といいます。
「依存症」の依存の対象 1.物質:アルコール・ニコチン・違法薬物など 2.行為:仕事・ギャンブル・買い物・リストカット・ネットなど(あるプロセスに対して) 3.人:職場・恋愛など 全ての依存症に共通するのは「止めようと思っても止められない」 「逃れようと思っても逃れられない」、つまり自分でコントロールできないということです。
今回はアルコール依存症について取り上げます。
日本のアルコール依存症者は厚労省の調査では推定82万人、KASTというスクリーニングでの推測は440万人。一方、依存症患者として治療を受けている方は入院・外来合計でわずか2万人弱というのが現状です。
アルコール依存症は怖い病気です! ・アルコール依存症の30%から60%が「うつ病」を併発 ・うつ病患者のうち7%から20%がアルコール依存症を併発 ・双極性障害(特にⅡ型)では50%がアルコール依存症を併発 ・長期にわたる飲酒では臓器の慢性疾患が進行して多臓器不全で命にかかわることも・・・ ・仕事依存との併発はかなりの高確率
さらにアルコール依存症で最も怖いのは「自殺リスクを高める」ことです。 自殺リスクについては一説では、一般の人の60から120倍になるとも言われています。 2009年に精神神経学の雑誌に発表された研究結果では、アルコール依存症者のうち、 自殺を考えたことがある人は50%から60%、自殺を企てた人は30%だそうです。 実際に自殺者の3分の1の方からは高濃度のアルコールが検出されています。 アルコールを過剰に摂取することで自殺の手段にしたり、飲酒の影響で自殺衝動をコントロールできなくなり、今まで行動にいたらなかった人が行動化してしまったりすることもあると考えられています。 そして依存症は、なりやすさに差があるとはいえ、基本的には誰でもがなりうる病気です。
アルコール依存症は飲み方の病気です。飲む量が問題ではありません。 アルコール依存症の飲み方とはどんなパターンでしょう 「一人で飲んで寝て、起きてまた飲む。これを繰り返す状態が週2日以上」です。 また、その前段階の「日常行動の合間に一人で少量を飲む。これを繰り返す状態が週2日以上」というパターンもアルコール依存症と考えられ要注意です。 その治療は断酒以外にはあり得ず、何年もかけて治療しても、たった一口の飲酒で元に戻ってしまい 90%以上が再発してしまうという大変に治療が困難な病気です。
では、NGなお酒の飲み方とは? ①追い詰められたときに酒を飲みながら考え込まない →自暴自棄的な結論になったり最悪の場合、衝動性が高まって自殺行動を促すことにもなったりしかねません。なので、ふさいでいる人を飲みに誘って慰めることは逆効果になることもあるので要注意です。 ②眠れないからといって眠るために飲まない →酒によって睡眠の質がかえって悪化します。不眠が続くのであれば、医師に相談しましょう。 ③飲酒量は多くても日本酒換算で1日2合までにする →ビールでは大瓶2本弱くらいです。 ④他の人への無理強い、酔った上での迷惑行為 →日本はお酒に対して「無礼講」「酒の席だから」と寛容な傾向があります。飲めない体質の方や酔いやすい方への無理強いは危険ですし、迷惑行為もアルコールハラスメントです。
アルコールのマイナス面を上げてきましたが、適量であればストレスの緩和や人間関係を円滑にするコミュニケーションツールとしても効用があるもの。上手に付き合っていきたいものです。
次回は職場依存・仕事依存について取り上げます。
2013.01.31