コラム

職場復帰ができる程度の回復って?

復職の判断について

北條 孝枝


厚労省の最新の統計調査(平成22年11月1日から平成23年10月31日までの期間)によるとメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者がいる事業所の割合は9.0%[22年調査7.3%]そのうち、職場復帰した労働者がいる事業所の割合は53.8%です。

メンタルヘルス不調による休業者の職場復帰の問題は、判断をしなければならない経営者・人事担当者・産業保健スタッフの皆さまには、大きなご負担になっているのが現状ではないでしょうか?

いったい、どこまで回復すれば、職場復帰の対象となるのでしょうか?
この問題について、法的な観点から考えてみましょう。

新たな手引きの対象者って?

厚労省発表の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(H21.3改定版 1.趣旨(4))にはこのように書かれています。

「本手引きが対象とする労働者は、心の健康問題で休業した全ての労働者であるが、第3ステップ以降の職場復帰に関しては、医学的に業務に復帰するのに問題がない程度に回復した労働者(すなわち軽減又は配慮された一定レベルの職務を遂行でき、かつ、想定される仕事をすることが治療上支障にならないと医学的に判断されるもの。)を対象としている。」

逆に読むと一定レベルの職務が遂行できれば職場復帰の対象者となり、会社としては職場復帰させるか、もしくは休業させるのであれば、賃金支払いの義務が発生することになります。(復帰できる状態で本人が希望しているのに復帰させないとなると、会社の都合による休業と考えられるため)

ここで言われている一定レベルの職務とは、何かをはっきりさせる必要が起きてきます。法律的には債務(労働義務)の本質を果たせるレベルととらえます。具体的には、教師であれば生徒の安全を守れない状態、営業職であれば、次々に得意先を失うような業務しかこなせない状態では、その職務の本質を果たせるとは言えません。

以上のとこを踏まえると、復職については、量的(休職前の業務量・時間)にとらえるのではなく、質的にとらえて判断をしていくべきです。この観点は、指針でも判例でも見解は一致しています。

現場での対応は?

では、職務を質的にとらえていくために、現場ではどのように対応していけばよいのでしょう?

量的なものは具体的な数字で表すことができるので、判断がしやすいのですが、質的にとなると、誰がどのように評価するかで変わってしまう可能性があり、判断も分かれてくることもありますよね。

となると、職務を「見える化」すること=職務分析をすることが必要だと考えられます。

その職務の内容を列挙し、職務の本質にかかわることから重要度に応じてポイントを付けていきます。

この職務分析の結果は客観的なものとなり、復職の判定にあたり、休職者との話し合いや、主治医の復職の可否の判断材料としても提示できるとともに、説得材料ともなります。

そのうえで、心の健康問題に詳しい信頼できる産業医に相談し、会社様として復職の判断をしていかれてはいかがでしょうか?

2013.08.08